「クラトス。いい大人が好き嫌いはよくない。」
「何を言っている、私に嫌いなものはない」
いつもポーカーフェイスで切り返してきた。嘘をつけ。お前、今日の昼食でアレをこっそり避けてただろ。
そして夕食の今も食べようとはしない。
「少し焦ってるだろ?」
ゆっくり、クラトスを見つめる。いつもは真っ直ぐな瞳が気まずそうに揺らいでいる。
「目が泳いでいるぞ。」
「き、気の所為だ」
「そんなことはない。私は核たる証拠を持っている」
「…なんだ?」
面倒くさそうに、クラトスは言ったのに少し優越感を感じつい鼻で笑ってしまった。
そして私は机に置いてあるトマトを切って盛り付けた皿をとった。
「嫌いだろ?トマト」
「う…」
あぁ、この顔だ。昼間もこの顔をしていた。
なにより今、私はこいつより優位にいる。
ふふふ・・・実に愉快だ。
「まぁ、トマトは食べなくても人生に支障はない。」
皿に乗ってあるトマトにフォークを刺す。
「なら良いだろ」
「ダメだ。それでは私が楽しくない。私は私の優越感の為にトマトを食べて苦しむクラトスが見たいだけだ」
「付き合いきれん」
そう言って、椅子から立ち上がろうとしたクラトスの足の間に右膝を乗せる。
右手にはトマトの刺さったフォーク。
そして、いつもは見せない笑みを浮かべた。
「ほら、あーんして?」
ゆっくりとクラトスの口元に近づける。
すると、クラトスは不敵な笑みを浮かべ笑い出した。
「ふふふ・・・甘いなユアン。」
クラトスはユアンの右手を掴みトマトの刺さったフォークを自らの口に持っていった。
「天使化したら味覚がなくなる。」
パクッと潔くトマトを口に入れモグモグと咀嚼した。
「故に、私には嫌いなものなどない。」
天使化してまで味わいたくないのかこの男は!!
「って!!ひ、卑怯だぞ!!クラトス!!!」
掴まれた手を振り解こうにもうまく力が入らない。
握っていたはずのフォークが金属音を立てて床に転がる。
身体を離そうにもいつのまにか腰に回された腕のせいで身動きが取れない。
「痛いっ!!手を離せ!!」
「嫌だ。ソレより、ユアン・・・」
いつもより低めの声。
強い力で抱き寄せられクラトスの膝に跨るように座わらせられた。
耳元に唇を寄せて甘く囁いた。
「“あーんして?”はないだろ?誘ってるとしか考えられんな。」
「そう聞こえるのはお前の頭が腐っているからだ。」
こんな男でも嫌いなモノを前にした時の顔が可愛いと思ってしまう私も頭が腐っているかもしれないな。
お味は無味無臭。
エンド
ユアンさんは昼食中にトマトを見て『うげっ』と思ったクラトスの顔が可愛くて、もう一度見たいな〜
ついでに、クラトスより優位に立てるし・・・みたいな感じで行動に出たわけなんですが、
クラトスの方がやっぱり一枚上手だったわけです。
ってか、天使化いいな〜はるとわは嫌いなモノが多いので只管天使化してると思う(笑)
4670hitの方さま、こんな感じでどうでしょうか??(ドキドキ)
一般people様の「真・クラユア好きに15のお題」よりお題拝借。