光り輝く教会。

最高の天気に恵まれ、二人は古代の神の前で誓いを立てようとしていた。

「汝、健やかなる時も病める時も、豊かなるときも、貧しきときも、この者を愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命の限り、かたく節操を守ることを約束いたしますか。」

厳かな雰囲気、落ち着いた威厳のある神父の声。

華やかな純白のドレス。真っ白なタキシード。誰よりも美しい花嫁。

「誓います。」

迷いのない、凛とした声。心はもう十の昔に決めている。

「新婦、そなたは?」

「・・・誓います」

やっとの思いで絞り出した声は掠れていて滑稽なくらい震えていた。

 

 

 

「では、指輪交換と誓いのキスを」

神父の言葉を合図にクラトスは新婦に向かいその白い手を掴み真新しいシンプルな指輪を薬指にはめた。

それが終わると新郎はいつもは見せないキラキラした笑顔をしながら新婦に自分の左手を差し出した。それを呆れた様子で新婦が、さっさと新郎クラトスの左手の薬指に指輪を通した。指輪交換が終わりクラトスは新婦の真っ白なベールに手をかけゆっくりと持ち上げた。

ベールはふわりと後ろに寄せられ、新婦の顔が露わになる。

いつもは一つにくくられた長い蒼い髪も今日はリーガルお抱えの美容師によってきっちりアップされていて、滅多にお目にかかれない項が強調されている。

ほんのりと化粧を施された白い頬、桜色の唇。純白のウエディングドレス。まるで純潔の乙女のようだ。

その新婦・・・ユアンを見つめ優しく目を細め、「ユアン、愛してる。」と甘く囁きクラトスはユアンの肩を軽く掴んだ。

「今度は幸せにする。」

唇が触れ合う前に小さく小さく囁いた言葉はきっとユアンにしか聞こえないはずだ。そして、唇を合わせた。

白の中であかとあおが触れ合う。

それはまるで映画のワンシーンのように美しかった。(コレット談)

 

 

 

 

ばれて

 

 

 

 

数日前。

「ユアン、昨日約束しただろう、ナンでも言うことを聞くと・・・」

泥のように重い身体に鞭打つようにやっとの思いでベッドから出たユアンにクラトスは楽しそうに声を掛けた。

嫌そうな表情を浮かべながらユアンは重々しく口を開いた。

「・・・覚えていたのか」

昨日のセックスがあまりにもしつこかったので、『何でも言う事聞く』を約束に解放されたのだ。

「無論だ。私はお前が言った一語一句覚えてるつもりだ。」

ふふんっといかにも得意げに言う目の前の男を抹殺したい気持ちを抑えながらユアンは掠れた声で言った。

「アンナのを覚えてやれ」

「案ずるな。アンナのはコンプリート済みだ。」

「…では、ロイ」

「ロイドも覚えている。」

この男は正真正銘のバカのようだな・・・アンナはいいとして、息子の言った一字一句覚えてるって・・・・どこまで親馬鹿なのだ?

「・・・素晴らしい記憶力だな」

「一度聞いたことは忘れないからな。でユアン、約束なんだが」

「私にできる範囲でだぞ?」

「あぁ、お前にしか出来ないことだ」

にやりと口元を緩めるクラトス。この顔はよくない。きっと、何か良からぬことを考えている。

背筋がゾクゾクする。

「何故だろう、凄くイヤな予感がする。」

そう、言ってやるとこの馬鹿はアイドル並みのさわやかな笑顔で言ってみせた。否、仰って下さいました。

「ナニ簡単なことだ。ただ私と所帯を持ってくれればいい。それだけだ」

「・・・血迷ったか、私は男だ。男同士が所帯をもってどうする。それにナニが簡単なのだ?私の人生がかかっているではないか。」

「だから、私と共に生きてくれはしないか?」

あぁ、もうこの男は・・・昔から、

「私には今でもマーテルがいる。それにお前には没したがアンナがいるではないか。」

「アンナもきっとお前なら許してくれる。アンナはお前のことを気に入っていたようだしな。マーテルは喜んでくれるはずだ。」

「ならロイドがいるではないか」

「ロイドにはまだ母が必要だ。だからこそユアンにロイドの母になってもらいたい。」

いや、むしろロイドくらいの年頃の世間一般のお子さんは親が鬱陶しい反抗期だと思うのだが・・・

「…だから、私は男だと」

「私はお前がいいのだ。ユアン」

言い出したら聞かないのだった。

 

 

 

 

で、先頭部分に辿り着いたというわけだが。

「美しいな・・・ユアン」

式の半ば目の前の赤い髪をしたサイコ野郎(クラトス)はうっとり30分ぐらいこちらを見続けている。

 

もう、勘弁してくれ。あぁ、ロイドが嬉しそうな顔でこっちを見ているではないか!!

なんとかしろ!!

「美しくない。それに私を見るな」

「いや、誰よりも美しいぞ・・・こんな美しい天使を見るなという方が無理だな。」

そっと御伽噺の王子様のような仕草でユアンの頬に手を添え、顔を近づけた。

「好きだ。愛してる。」

そう言ってクラトスはチュッと軽く唇を合わせた。

身の毛がよだつ。

キスされるのも“好きだ”とか“愛してる”と言われるのが嫌じゃないどころか、嬉しいと思える自分にだ。

 

やけくそに目の前のやけに整った唇に噛み付いてやった。

 

すると、周りから黄色い悲鳴が上がった。

 

しまった!!周りに人がいたんだった・・・

 

 

 

 

 

 

ハッピーエンド?

 

 

 

 


 
 

 

いつぞやの「願うこと」の派生編です。

 

ってか「そして、永遠に君と共に。」の続き、にしちゃおうかな(笑)

 

 

まさかのログインID&Passの紛失により長い間更新出来ず申しわけありませんでした!!(待っていて下さった方いたっちゃるかなぁ/ドキドキ)

 

のんびりですが再復活ってことで頑張って行きたいと思います。

 

2010年11月26日 はるとわ拝


 

 

 

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