「クルシスはここにいては行けない。」

クラトスがそう言った。

だが、クラトスはクルシスの幹部でありコトの発端の一人でもあるユアンを連れて行く気はなかった。精霊マーテルがいる今、ユアンは彼女から離れないだろうし離すのは野暮ってやつだと考えている。

最終戦を向かえオリジンを封印から解放する前にユアンに自分の気持ちを告げた。そして、死ぬはずだった自分にユアンは自らのマナを与えまた助けてくれた。クラトスはそれだけで満足だった。アンナをこの手で殺め、全てに絶望していた私を救いあげたのは他ではないユアンだった。アンナのことは無論今でも愛している。だが、ユアンも愛おしいのだ。マーテルが目覚めた今、自分の気持ちはユアンの重荷になるとクラトスは自分の思いを心にしまった。

デリス・カーラーンと共にこの地を離れるの私たちでいい。この4000年の業は私が背負う。だから、ユアンせめてお前だけでも幸せでいてくれ。ただそれだけがクラトスの願いだった。

 

 

 

 

後の日に。

 

 

 

 

デリス・カーラーンがこの地を去る日がやって来た。

ユアンは前日にクラトスから別れを告げられていた。私たちは旅立つがお前ココに残りマーテルと大樹を守ってくれと。ユアンも初めはその予定だったが、4000年の長い時間を共にしたことや急なクラトスから告白でユアンの心は動いていた。

「私は…」

私はどうすればよい?マーテルが目覚めた今、彼女を今度は守り続けたい。そう思う傍らクラトスが気になって仕方ない。クラトスについて行きたい、だが私はマーテルに永遠の愛を誓った。心の中がそんな思いでぐちゃぐちゃだ。

「ユアン、貴方は自由よ。私は貴方の愛したマーテルではないの。だから、心配しないで…好きにしていいのよ。」

「精霊マーテル…」

クラトスに会えばきっと彼を困らせてしまうと思い、心を落ち着けようと大樹にやって来た。その心の内を読み取ったかのようにマーテルは言った。

4000年間変わらず愛してくれて有難う。マーテルも貴方を変わらず愛しています。」

マーテルと自分と彼女を切り離して言う彼女。きっと、精霊マーテルでもあるが彼女はマーテルでもあるのだなと思う。

「マーテル…」

「さぁ、早く行って。後悔しないように…」

ユアンの背中を押すように精霊マーテルは優しく微笑む。コレはマーテルの確かな願いだ。4000年間自分と弟に囚われていた彼を解き放したい…ただそれだけ。

「ありがとう。マーテル…行ってくるよ。」

ユアンはマーテルの左手をとり薬指に口付けをして優しく言った。4000年前も今も変わらず貴女もミトスも愛していると。

「行ってらっしゃい。きっといつかまた逢いましょう。」

ありがとう、さようなら…私の愛した人。最後まで私たちを救ってくれた優しい貴方。貴方には幸せになって欲しいの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからユアンは全速力で飛んだ。まだ、間に合うはずだと。そして、デリス・カーラーンの麓に辿り着いた時4000年間も見ていた見慣れた紅い髪が見えた。

「クラトス!」

無我夢中でその人物に抱きついた。周りにロイドたちがいただろうがユアンは恥も何もかも投げ捨てた。今、退いてはもう逢えないかも知れない。それが何より怖かった。

「ユアン?!」

急に舞い降りた天使に抱きつかれたクラトスは半ばパニックだった。目の前には自分と同じくらい驚いた表情の息子たち。そして、自分を強く抱きしめる最愛の人。

「私を置いていくな…私もクルシスだぞ」

耳元から泣きそうな声が聞こえる。首にユアンの両腕が回っているため彼の顔は見えない。ユアンの背中に腕を回し抱き締めたいと思うがそれではマーテルに悪い。心を落ち着かせクラトスは平然を装った。

「マーテルを一人にする気か?」

「私の愛したマーテルはもう眠りについた…それに彼女が後悔するな、行けと…クラトス、私がいては駄目なのか?」

ようやく、ユアンはクラトスの首に腕を回したまま少し体を離しクラトスの顔を見た。同時にクラトスもユアンに視線を向けた。クラトスは少し狼狽えた。ここ何千年もの間大勢の前で泣くことがなかったユアンがボロボロと泣いているのだから。

「ユアン…そんなわけがないだろう?」

むしろ、嬉しい限りだ。だが、私は

「クラトス、ユアンも連れて行ってやれよ。」

二人の様子を見守っていたロイドが口を開いた。そして、エターナルソード強く握った。

「そうそう〜なんたって、あのユアン様が俺様たち無視であんたに抱きついて泣いてんだぜ〜」

茶化すようにゼロスがいつもの調子で言い、言葉を止め何時にない真面目な顔で続きを言った。

「コレを連れて行かず誰を連れて行くんだ?」

そう言ってゼロスはまたいつもの調子に戻った。

「ささっロイドくん!さっさと切り離しちゃえよ〜」

ゼロスは二人に背を向けひらひらと手を振った。

それを見てゆっくりとユアンはクラトスから離れゼロスの元に飛んだ。そして後ろから抱きしめて言った。

「ゼロス、すまなかった…辛い目ばかりさせて」

「天使様ほどでもねーよ…」

「ありがとう…産まれてきてくれて、お前と過ごした数年間幸せだったよ」

「ユアン…最後にオマジナイして、怖い夢を見ないようにってさ」

ユアンの腕を解き泣きそうな顔でゼロスはユアンを見る。涙を浮かべてユアンは微笑みゼロスの瞼に口付けをした。小さくゼロスに聞こえる位の声で「もう一人じゃない」と囁いた。「あぁ」と呟いてゼロスの瞳から涙が零れた。

クラトスは羽根をはためかせユアンを背中から抱きしめワープに飛んだ。もう時間がないし、ユアンを誰にも渡したくなかった。

ワープ装置に二人が乗るとロイドは声をかけた。

「じゃな、父さん。ユアンと幸せに」

「あぁ、ありがとうロイド」

「ありがとうみんな…」

それにつられる様にユアンもそう言った。

デリス・カーラーンにワープした二人を見てロイドがエターナルソードを強く振りデリス・カーラーンを繋ぎ止める鎖を打ち切った。

「ありがとう…か…ってゼロス、大丈夫か?」

「あぁ…なんとかな…」

にへっと笑ってみせるゼロスだがその涙はしばらく止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

end

 

 


 

二人で新居(デリス)にみたいな?

 

こんなの夢見てたんですけどね・・・

 

TOS-R・・・したくないですね(泣)

 

 

 

 

ちなみにゼロスはユアンが好きです。なんってか、ユアンに理想のお母さんを重ねてます。

 

 

そのうちその話も書きたいですね〜

2009年3月23日 はるとわ

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